さて、いよいよ体験をさせていただく時間です。藁に触るのはほとんど初めての私には、大根注連(だいこんじめ)のような大きなしめ縄は作れませんので、細い縄を綯うことにしました。
『しめ縄の作り方』を調べてみると、『右綯い』『左綯い』という言葉がよく出てきますが、中山先生は縄目の上下で説明してくださいました。
上に写っている縄が、日常生活で使用される縄です。縄目が上から下へ綯われています。
そして下の縄がしめ縄等で使用される縄です。縄目が下から上へ綯われています。
縄目の上下(右綯い・左綯い)の違いについては諸説ありますが、私たちが日常的に使用する縄と、神さま仏さまに対して使う神聖な縄とを区別するねらいがあったようです。ただ、綯い方については地域によって、時代によって異なり、上下(左右)を区別しない場合もあるので一概には言えません。
ただ、中山先生に伺った所、しめ縄の綯い方で綯ったの縄は日常使いにはとても使いづらいとおっしゃっていました。縛ろうと思っても固く縛りづらいそうです。
まずは先生の縄綯いの定位置に座らせていただき、藁を霧吹きで湿らせ、3つに分けます。3つのうち2つを始めに綯い、最後にもうひとつを加えて1本に編むことで縄が完成するというわけです。
準備が完了し、いざ!縄綯い開始!なのですが・・・
しっかりと綯っているつもりなのに、わたしの持つ藁は、縄にはならず、ぱらぱらぱらとただの藁・・・。見かねた先生から柄つきの大きなクリップをお借りし、柄の部分をおしりに敷いてクリップで藁を固定して再挑戦。なんとか縄のような形になっていきました。
(ちなみに、必死に綯っていたので写真はありません)
綯った縄が20cmくらいの長さになったところで藁を足します。長さを足すためです。しかし、ここも技術が必要で、ねじりが緩くなってしまったり、追加した藁の根元が出すぎてしまったり。
なんとか綯いあがったら、2本の縄の先を一度固定します。固定の仕方も教わりましたが、ここでも私は苦戦しました。
次に、分けておいた3つ目の藁の束をねじりながら1本の縄にし、先に綯った2本の縄と合わせて編んでいきます。この頃になると、力いっぱい縄を綯っていた私の手は、かなり疲れていました。
なんとか1本完成しました。
「初めてにしては上等だ」とのお言葉、とても嬉しかったのですが「力はそんなに入れなくてもいいんだよ」と先生。ぎゅうぎゅうしすぎていたようです。
それから、手の平で綯うといっても、指の方を使うと上手に綯えるというコツも教えていただき、2本めの縄を綯いはじめました。
工房には、一緒に体験したり見学したりしている西泉寺の役員さんたちもいらっしゃり、
「苦戦してるね、紘海さん(笑)」と和気あいあいと盛り上がっていたのですが、私は必死です。
2本目は1本目に比べると縄の太さがある程度一定にはなったのですが、場所によって綯う時の力が違うようで、固く綯えている部分とゆるい部分が目に見える縄になりました。
そのまま3本目、少し長めの縄に挑戦する頃に、やっと手から力が抜けたような感覚がありました。それまではやはりぎゅうぎゅう力いっぱい綯っていたのでしょう。
3本目の出来栄えは一番良く、自分としてはかなり!進歩を感じたのですが、やはりまっすぐな縄には程遠い出来栄え。時々お手本で先生が見せてくださる縄は常にきれいでまっすぐなもので、まさに職人技でした。
縄綯いの習慣や技術を若い世代に伝えていきたいとおっしゃる中山先生。何度か公民館等で講習会を開いたりもしてきたそうです。
「ほとんど毎日やってるから、またいつでも。」と穏やかにおっしゃってくださいました。
ホームセンターでもスーパーでもきれいな縄が気軽に購入できる時代ですが、初めて綯った不格好な3本のMy縄をみると、これはこれで味があるような気もしてきます。中山先生のような職人さんの固くてきれいな縄には程遠い出来ですが、今年の年末にはこの縄を使ってお飾りを作ろうと思っています。家族でわいわい、来年の歳神さまを待つことが今から楽しみです。
中山和昭先生、今回は貴重な経験をありがとうございました。
浮津紘海
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